2003年03月03日

(旧館から)
自分で忘れないための覚え書きみたいなものですが...

FETってどういうものか、簡単にまとめてみました。

用語
※電圧は電気を送り出す圧力:単位はV(ボルト)
※電流は流れる電気の量:単位はA(アンペア)
※電力は電気の量。電圧 x 電流:単位はW(ワット)
※電子はマイナスからプラスに流れるが、電流はプラスからマイナスに流れると表現される。)
※しきい値:ON/OFFの境目 FET(Field Effect Transistor)

■FETとは?
トランジスタの一種。電界効果トランジスタ。 ここの説明では、バイポーラトランジスタとの対比させながら説明するために、 バイポーラトランジスタをトランジスタとし、電界効果トランジスタはFETとして扱う。 FETはトランジスタよりも、構造や特性にバリエーションが多く、わかりにくい。

■FETとトランジスタの動作
FETもトランジスタも、電流を制御する点では同じ。 動作上の大きな違いは、トランジスタは小さな電流で大きな電流を制御する、電流−電流動作であるのに FETは電圧で電流を制御する、電圧−電流動作になっている。これは真空管と同じである。

■FETの端子と役割
端子はゲート、ソース、ドレインの3つ。 G ゲートは、制御するための端子。 S ソースは、電流が供給される端子。 D ドレインは電流を供給する端子。負荷が付く側。 信号はゲートに。電力はソースに。負荷はドレインに。 つまり電流の制御はゲートの電圧とソース電圧の差で行われ、 それに合わせてソースとドレインの間で電流が流れたり流れなかったりする。

■各端子のトランジスタとの比較
ちなみに、トランジスタはベースとエミッタの間に電流が流れるとエミッタ、コレクタ間にも電流が流れるが FETはゲート、ソース間に電圧差があると、ソース、ドレイン間に電流が流れるようになる。 トランジスタもFETも電流差や電圧差があれば必ず電流が流れるわけではなく、 流れ始める場合の電圧差や電流の方向と、差や量が品番毎に決まっている。 FETとトランジスタとの対比では(共通エミッタの使い方の場合) G ゲート:B ベース S ソース:E エミッタ D ドレイン:C コレクタ

■FETの種類(PchとNch)
ゲートとソースのどちらが高いときに電流が流れるかで、 Pch(Pチャンネル)とNch(Nチャンネル)の2種類がある。
Pchはゲートがソースよりも低い電圧の時に電流が流れる。
Nchはゲートがソースよりも高い電圧の時に電流が流れる。
※品番で2SJで始まるモノはPch、2SKで始まるモノはNch。
外国の製品や特殊な用途向けに開発されたモノなど、最初2文字が2Sで始まらないモノもある。
FETとトランジスタとの対比では(共通エミッタの使い方の場合) PchがPNP型、NchがNPN型と類似。

■NchとPchの使い方
Nchの使い方は、ソースよりもゲートを高い電圧にしないといけないため、 ソースをアース(回路内の0V基準、マイナス)につなぎドレインより吸い込む電流を制御するときに使うのが一般的。 Pchの使い方は、ソースよりもゲートを低い電圧にしないといけないため、 ソースをVsrc(回路内の電力供給側、プラス)につなぎドレインより吐き出す電流を制御するときに使うのが一般的。

■FETとトランジスタの電力消費の違い(制限抵抗と電圧降下)
FETを通る電流は抵抗を受ける。(制限抵抗) この抵抗のために電圧がさがり、その分電力を消費してしまい、発熱してしまう。 トランジスタ(FETと分ける時はバイポーラトランジスタとよぶ)との違いはこの部分にもある。 トランジスタは、大体一定した電圧降下(0.7V)があり、その分電力を消費してしまい、発熱してしまう。 トランジスタは制限抵抗は、電流で変わるが、FETは一定になる。 トランジスタは、消費される電圧が一定なため、流す電流が増えれば増えるほど効率が落ち、発熱しやすくなる。 FETの制限抵抗は、ゲート、ソース間の電圧差が大きいとソース、ドレイン間の抵抗値が小さくなり、電圧差が少ないと大きくなる。 つまり、ゲート、ソース間の電圧差が大きいほど発熱しにくく(その分ソース、ドレイン間に大きな電流が流せる)効率が良く、 電圧差が少ないと発熱しやすく、効率が悪くなる。 しきい値より電圧差が小さいと、ソース、ドレイン間には電流が流れなくなる。 ※ゲート、ソース間にかけられる電圧差は上限が品番毎に決まっているので、限度がある。 低電圧(1V/3V/5V)で使うことができるFETは制限抵抗を小さくしている。 また、冷えているときほど制限抵抗が小さくなる傾向がある。

■FETを効率よく動作させるための工夫
大電流を扱う場合や発熱を避けるときは、ゲートにかける電圧をNchの場合は、ソースより高く、Pchの場合はアースよりも低くする事もある。 (バイアスをかける) 制御信号でトランジスタを制御し、電圧源から電流をFETに流すように回路を組む場合が多い。 FETのゲートのバイアスをかけるためにはほとんど電流がいらないため トランジスタはほとんど発熱せず、 FETはゲートソース間の電圧差が高くなると発熱が少なくなるという良いとこどりの回路になる。 (トランジスタは消費する電圧が決まっているので電流が少なければ発熱しない) 実際の回路ではゲートの耐圧に限度があることに注意する。 動作の切替が早くない場合はFET駆動の電流は少なくていいので、簡単な昇圧回路を用意するだけですむ。 この方法はモーターなどの制御をロジック回路やマイコンで行う場合などに多くみられる。

■FETのゲートとトランジスタのベースの違い
FETはゲート、ソース間に電圧があればいいので、ゲートに蓄えられる電流分だけしか、制御用の電流は必要がない。 トランジスタはベース、エミッタ間に流れ続けるのと、大きな違いである。 ただ、ゲートにかける電圧を高速に切り替えると(周波数が高いと)ゲートに電圧を貯めたり抜いたりするために電流が流れるので、高速で切り替える際には、ゲートの容量に注意が必要となる。 ゲートの容量は品番で変わる。 また、トランジスタのベースを解放するとエミッタ、ベース電流が流れなくなるのでエミッタ、コレクタ間の電流も流れないが(OFF) FETはゲートに電荷を蓄えてしまうので、ゲートを開放してもON/OFFの状態は変わらない。(漏れ電流によりゆっくりOFFになるが) OFFにするときもONにするときもきちんと電圧をかけないとしっかりとした制御ができない。 ※容量:蓄えられる電気の量。蓄えられた電気の量。単位はコンデンサと同じくF(ファラッド)。 通常はpF(ピコファラッド)、uF(マイクロファラッド)を使用する。

■FETの材質の種類(MOS FET)
FETは構造的な違いから、接合型とMOS FETとがある。
※ICなどのC-MOSは、MOS-FETのNchとPchをセットで使った構造のこと。 電流の制御でよく使われるMOS型は、ゲートとソース、ドレインが絶縁されているためゲートにかかる電流は少ない。 (ハイインピーダンス、つまり抵抗が非常に高く・電流が流れにくい) そのため、MOS FETはゲートの絶縁部分が静電気などで破壊されやすいので、C-MOS ICと同じく取扱に注意が必要。 多くの電流を扱うために一つのパッケージ内部で、大量のMOS FETを並列につないだモノをPOWER MOS FETと呼ぶ。 アンペアクラスの電流を制御するFETはほとんどPOWER MOS FET。 また、FETは素子といいながら、構造はほとんどIC。そのため、トランジスタよりも高価になりやすい。 大容量トランジスタと小信号用の構造が変わらないが、FETは扱える電流範囲で構造から違っている。

■エンハンス型とデプレッション型
FETは流れなかったり流れたりする境界は品番で変わるので注意が必要。 ソースとゲートの電圧が同じ時にはソース、ドレイン間には電流が流れなくなるのがエンハンス型。 ソースとゲートの電圧が同じ時にソース、ドレイン間に電流が流れているのがデプレッション型。 ON-OFFの境界が0Vより高いか低いかの違いだと考えればいい。 MOS FET、特にPOWER MOS FETはほとんどエンハンス型。

■FETの使用場所
発熱が少ないことから、小型製品の電力制御用途に。 トランジスタよりも単品での価格が高いことが正当化できる用途に使われている。 ラジコンの性能向上と小型化や電源アダプタなどいろいろなところで役に立っている。

■ちなみにCPUでは...
またMOSタイプは微細加工で作れ、発熱が少ないことからCPUやロジックICの内部で大量に使われている。 昔の高性能コンピュータは水冷だったのに、最近は空冷ですむのはFETのおかげ。 ただし、ON/OFFの状態が切替る時にゲートの電位の切替で電力を消費するため、 大量のFETを内蔵しているCPUを高クロックにすると猛烈に熱くなってしまう。 ほって置くと、自らの熱で壊れてしまう。

高速化 → 高クロック → 発熱する → IC内部のFETの一つあたりの消費電力を押さえる → IC内部のFETを小型化しゲートの制御に必要な電荷を少なくするように

高速化と高集積化はこんな関係。

高速化 → 高熱化 → FETの消費電力を下げる → 動作電圧を下げる → IC内部のFETをFETを小型化しギャップを狭くして少ない電圧で動作するように

熱対策の低電圧動作はこんな感じ。

バイポーラ型だったら、電圧降下が決まった値になるので、最新の1Vとか2Vとかで動くCPUを作るのは不可能だった。 電圧下げると、制限抵抗が増えて発熱要素が強まりそうですが、この場合は、流れる電流も小さく押さえています。(小型化) ということで、高速化に伴う熱対策と、小型化・高集積化は両立できるわけです。 ハイエンドなレベルでは原子数個分の配線なんてレベルになろうとしているので、高集積化は限度がありますが。

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