2003年11月15日

(別館から)
シリンダはシンプルだけど、もっとも熱を受ける部品のひとつなんだ。だから、できることはそんなにないけど、熱対策では重要な部品だよ。

上の方は燃焼室の一部で、直接火にあぶられるし、ピストンの熱を逃がす役目もあるからね。

シリンダの構成は、外側のブロックと内側のスリーブ、あとカムチェーンのラインやテンショナーなどの付属品で構成されているよ。上部は放熱性と丈夫さを考えてアルミや銅のヘッドガスケットでシリンダーヘッドにつながり、下部は密閉性を優先して紙のベースガスケットでクランクケースにつながっているんだ。

■外側のブロックはアルミ製の鋳物が多いよ。

空冷の場合は、外側にフィンがついているし、水冷の場合は水が流れるようになっているよ。内側からの熱を外側のフィンでいかに効率よく放熱するかがポイントだね。

特殊な塗装をしたりサンドブラストをかけて放熱性を高めると効果的だよ。フィンを追加して大きくしてもいいよ。温度の差が激しいところだから塗装する時は塗料の種類に制約がある見たい。

シリンダは力がかかるところだから、ディンプルなどの表面積を増やす加工をすることはめったにないみたいだね。

■スリーブは特殊な鉄やアルミにメッキしたものが良く使われているね。

特にアルミにメッキをしたものは、熱での膨張率がアルミのピストンと近いからクリアランスが狭く取れるんだ。つまり、より多くの熱をピストンから受け取ることが出来るって事なんだけどね。鉄よりも熱を良く伝えるアルミで出来ている上にクリアランスも狭いから熱的にはベストなんだけど、強度の問題や、表面に特殊なメッキをしなくては行けないなどの問題から、必ず使われている訳ではないよ。

※SRにもカスタムショップのチューニングメニューに並んでいるけど、ボアアップを伴わない場合でも、強度の問題で鉄のスリーブよりも外形が大きくなるからクランクケースの加工も必要になる見たい。

スリーブの表面にはホーニングというオイルだまりのための細かい傷をつける加工をするんだけど、この傷が擦り減って無くなちゃうとピストンとシリンダの間にオイルが保持できなくなちゃうんだ。傷のつけ方自体も、斜めにいれたり、クロスにいれたりしたり、砥石で傷をつけた後にコルクで表面を慣らしたりといろいろテクニックがあるんだよ。

■直接熱を受けないカムチェーンのラインも熱を考えるときには重要な役割があるんだ。

シリンダヘッドに供給されたオイルがここを流れてクランクケースに入って行くときに、シリンダの熱を渡すことが出来るんだ。
なるべく広がって流れるようにルートを調整することと、サンドブラスとなどで表面を荒らしてあげることと、オイルとなじまない塗料などがついていたらオイルがなじみやすいように剥離するといいよ。オイルのルートを横ぎるように溝やかすかな出っ張りがあると、オイルが流れるルートを広げられるからね。

あとね、ここを通して、カムチェーンの回転と一緒に移動する空気や、ピストンが上下するのにあわせて、クランクケースの空気が押し出されたり吸い込まれたりして、シリンダヘッドやシリンダよりも冷えた空気が通るよ。壁面いっぱいに広がった熱いオイルを流れる空気が冷やしてくれるって事だよ。

さらにシリンダヘッドにブローバイ用の入り口を設けてあると外から冷えた空気を吸い込んだり、シリンダヘッド内の熱い空気を追い出すことも出来るよ。単に穴を空けるだけじゃなくって、オイルキャッチタンクやオイルフィルターなど、余計なものが入らないようにしたり、出て行かないようにするための装置を追加しないと行けないから、簡単ではないんだけどね。

さてさて、次はオイルポンプだよ

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